おなかの病気
おなかの病気
お腹の病気(=消化器内科の病気)には様々なものがあり、原因となる臓器やその病態によって特徴的な症状を起こすものもあれば、特定の所見がない場合もあります。ただの便秘だと思っていたら実は大腸がんのサインであったりなど、適切な時期に適切な治療を受ける機会を逃してしまう事のないように、心配事がありましたら一度当院にご相談ください。
胃から逆流してきた胃酸等によって食道の粘膜が炎症を起こしている状態です。食道と胃の間には胃酸の逆流を防ぐ蓋の役割を果たしている括約筋がありますが、年齢が上がって筋肉の機能が低下してくると発症しやすくなります。日本では、食生活の欧米化により近年若年者でも増加傾向にある疾患です。食道粘膜の炎症が長期的に続くと食道がんのリスクが上昇するため、症状がある場合には消化器内科を受診して治療する事が大事です。
逆流性食道炎に関する詳しい内容に関してはこちらのページ(準備中)をご参照ください。
食道がんは進行するにつれて、物を飲み込んだ時の胸の違和感やつかえる感覚・体重減少・胸や背中の痛み・咳・嗄声(声のかすれ)などの症状を認めます。逆流性食道炎や心臓・肺の疾患と似ている症状を呈する事があるため、包括的に検査および判断する必要があります。また、食道がんはタバコ・お酒がリスクになります。喫煙も飲酒もしない人と比較して、喫煙者や大酒家の方は約3倍、喫煙と大量飲酒どちらもの方は約8倍程度、食道がんのリスクが高くなると言われています。これら症状や習慣のある方は、胃カメラを是非ご検討ください。
胃潰瘍とは、胃の粘膜がただれ胃壁が傷ついた状態をいい、胃カメラでは大きくえぐれた口内炎のように見えます。胃潰瘍は胃液と胃壁を守る粘液の分泌量のバランスが崩れる事で起こります。大多数がヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)かロキソニンなどの鎮痛剤が原因となりますが、過労・睡眠不足・ストレスなども複合的に影響する事があります。必ずではありませんが、胃潰瘍は食後に痛くなり、十二指腸潰瘍は空腹時に痛くなる事があります。また、黒い便(黒色便)も胃潰瘍を疑う1つのサインになります。
ピロリ菌は長年胃内に住み着く事で胃粘膜に慢性の炎症を引き起こし、胃潰瘍や胃がんの原因となります。ピロリ菌感染者とピロリ菌非感染者を比較した時に胃がんを発症するリスクが15倍以上であったとの報告もあります。胃がんにならないためには、ピロリ菌に感染しない事・ピロリ菌に感染させない事・ピロリ菌に感染している場合にはしっかりと除菌する事が非常に重要です。
ヘリコバクター・ピロリ菌に関する詳しい内容に関してはこちらのページ(準備中)をご参照ください。
機能性ディスペプシアでは、食後の胃もたれや膨満感、食べ始めてすぐに満腹感を感じる(早期満腹感)、みぞおちの痛み、吐き気、げっぷ等の症状を認めます。機能性ディスペプシアは、慢性的にこのような症状が続いているのに、胃カメラなどの検査をおこなっても異常が認められないのが特徴です。胃の運動機能異常(食べたものをスムーズに十二指腸に送れない)や胃酸過多、胃の知覚過敏、ストレスなどが原因として考えられていますがはっきりとは分かっていません。機能性ディスペプシアでは、胃の運動機能を調整するような薬などを使用する事で症状を改善できるケースが多いです。
胃がんは、ヘリコバクターピロリ菌感染による慢性的な胃粘膜の炎症や、高塩分食、喫煙などがリスクとなります。胃がんは日本におけるがん死亡者数第3位の病気ですが(2021年データ)、胃カメラをおこなっていれば命にかかわる状態になる前に見つけられる病気です。
特に、ピロリ菌感染者では85歳までに胃がんになる確率が男性:17.0%、女性:7.7%(感染していない場合、男性:1.0%、女性:0.5%)と非常に高く、ピロリ菌の除菌後も定期的な胃カメラでのフォローアップが非常に大切です。
過敏性腸症候群とは、一般の腸の検査(大腸造影検査、内視鏡検査、便検査など)をしても炎症や潰瘍など見た目の異常がないにも関わらず、慢性的に腹部の膨満感や腹痛を起こしたり、下痢や便秘などの便通異常を来たしたりする疾患です。生命に関わる病気ではありませんが、お腹の痛み、下痢、便秘、不安などの症状で、通勤・通学など生活に支障をきたす事が多く、生活の質が著しく低下するため適切な治療が求められます。
過敏性腸症候群に関する詳しい内容に関してはこちらのページ(準備中)をご参照ください。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起こり、びらん・ただれ・潰瘍などが生じます。主に、血便・粘血便・下痢・腹痛などを認める事が多いです。軽症ではあまり血便は伴いませんが、重症化すれば発熱・食欲不振・体重減少・貧血などが加わる事もあります。さらに関節炎・虹彩炎・膵炎・皮膚症状(結節性紅斑、壊疽性膿皮症など)・原発性硬化性胆管炎などを合併する事もあります。現在は治療薬も、5-ASA製剤(メサラジン)や副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制剤、生物学的製剤など様々なものがありますが、基本的には付き合っていく病気になります。また診断や定期フォローアップに大腸カメラが必須です。
クローン病は、口から肛門まで消化管のどの部位にも炎症が生じる可能性があり、炎症を起こした部分はびらん・ただれ・潰瘍などを形成します。症状としては、腹痛・下痢・粘血便などを認めますが、良くなったりわるくなったり(寛解期と活動期)を繰り返す事が特徴です。病状が進行すると、瘻孔(ろうこう:腸に深い潰瘍ができ皮膚やほかの臓器との間に通路ができる状態)や狭窄といった合併症を起こす事もあります。潰瘍性大腸炎と合わせて炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease)と言い、やはり付き合っていく病気になります。病気の勢いが強い活動期には総合病院での検査・治療が必要となりますが、薬にて落ち着いている状態でも消化器内科専門医でのフォローアップが推奨されます。
大腸の管の内側表面は粘膜でできており、この粘膜の最も浅い層の一部がイボのように隆起してできたものを大腸ポリープといいます。大腸がんは、最初からがんとして発生するパターンと、良性の腫瘍性ポリープ(大腸腺腫)が悪性化してがんになるパターンがあります。多くは後者によるもので、サイズが大きくなるほどがん化率が高まると考えられています。そのため発がんリスクのある大腸腺腫を良性の時点で早めに切除する事が大腸がんの予防につながります。当院でも大腸カメラの際に見つけたポリープは、その場で切除ができます。
大腸ポリープに関する詳しい内容に関してはこちらのページ(準備中)をご参照ください。
大腸がんは、良性のポリープ(主に腺腫)が大きく成長するとともにがん化するものが大半です。ポリープの段階であったり、まだ初期のがんでは症状はほとんどでませんが、進行すると血便・便が細くなる・腹痛・便秘と下痢を繰り返す・貧血・体重減少・食欲不振など様々な症状がでてきます。大腸がんは早期に発見し治療すれば十分に根治が目指せますが、進行してしまうと根治が難しくなりますので早期発見・早期治療が非常に重要です。また、「健診などでの便潜血が陽性となったが、痔の影響だと思って大腸カメラをしなかった」などと言ったお話もよく聞きます。上記のような症状や便潜血が陽性となった方は、是非ご相談ください。
摂取した栄養が消費カロリーを上回る事で、肝臓に中性脂肪が異常に蓄積した状態を脂肪肝と言います。近年、栄養過多・肥満・運動不足などにより成人男性の約30~40%、成人女性の約10~20%に脂肪肝が認められます。健診にて指摘される事も多い疾患で、血液検査では、肝酵素と呼ばれるAST(GOT)やALT(GPT)の値が50~100前後に上昇し、γ-GTPやコリンエステラーゼ(ChE)も高くなります。原因としては、アルコールによるアルコール性脂肪肝と近年増えている肥満・糖尿病による非アルコール性脂肪性肝疾患があり、それぞれの原因に沿った治療が必要です。
元々、肝臓はとても再生能力のある臓器であり、例えば肝臓移植などで肝臓を切除したとしてもある程度再生していきます。しかし、持続的な肝臓へのダメージが長期間にわたって続き、肝臓内に瘢痕組織が増えて硬くなると再生できなくなります。この状態を肝硬変と言います。持続的な肝臓へのダメージの原因として、B型肝炎やC型肝炎、脂肪肝、アルコール性肝障害などがあります。また肝硬変の中でも、初期の「身体症状がない代償期」と進行した「症状が現れる非代償期」に分けられ、非代償期になると、黄疸(目や皮膚が黄色くなる)や腹水・浮腫(手足がむくむ)・貧血・食道静脈瘤、肝性脳症(毒素が貯まり朦朧とする)などの合併症が現れます。肝硬変は命にかかわる病気であり、肝硬変に対する治療ももちろん大事ですが、肝硬変にならない・非代償期に進行させない事が最も大切です。
B型肝炎は、輸血(現在の日本ではほぼ問題なし)・感染者が使用して消毒していない注射針や入れ墨針、ピアスの穴あけ等の使いまわし・感染者との性行為・母子感染(現在は少ない)などによるB型肝炎ウイルスの感染が原因として挙げられます。またC型肝炎は、輸血(現在の日本ではほぼ問題なし)・感染者が使用して消毒していない注射針や入れ墨針、ピアスの穴あけ等の使いまわし・感染者との性行為(リスク低い)などによるC型肝炎ウイルスの感染が原因となります。また、肝炎ウイルスに感染していても、ウイルスの活動性によって経過観察か治療が必要かなどの判断が分かれますので、医療機関を受診し、ご自分の状況を把握する事が大切です。
胆のうポリープは、胆のうの粘膜に発生した突起物(隆起性病変)として認められ、大部分は良性でがん化する事はありません。胆のうポリープの中で最も多いのがコレステロールポリープであり、約90%を占めます。多くは5mm以下であり、多発しやすいという特徴があります。しかし、大きさが10mm以上・茎がないあるいは幅広い形をしている・増大傾向を示すなどの場合には、胆のうがんである可能性があるため手術をおこないます。腹部超音波検査にてフォローアップができるので、胆のうポリープをしてきされた方は定期的に超音波検査を受けてください。
胆石は、胆のうや胆管内にできる結晶で、胆のう内にあるものは胆のう結石、胆管にあるものは総胆管結石、肝臓内の胆管にあるものは肝内結石と、場所によって呼び方が変わります。通常、胆石と言った場合には胆のう結石の事を指し、日本人の10人に1人は持っている非常にありふれたものです。胆のう結石があるだけであれば特に治療の必要はありませんが、胆のうや胆管の狭い箇所に結石が嵌まると激痛を引き起こす事があります(胆のう炎・胆管炎)。また、総胆管結石や肝内結石は、症状がなくとも結石が存在するだけで検査・治療が必要となります。
胆のうがん・胆管がんは、あまり聞き慣れないかもしれませんが、体の奥深くに臓器があり早期に発見される事が少なく、また有効な治療法が乏しいため、全体的に予後の悪いがんです。腹部超音波検査やCT検査、MRI検査などが有用ですが、早期の小さいがんの場合にはそれでも発見が難しく診断までに難渋する事も多々あります。腹痛・黄疸・血液検査異常などがあり、原因がはっきりしない場合などは胆のうがん・胆管がんの可能性も含め精密検査や定期フォローアップをする必要があります。
膵炎には、急激な炎症によってみぞおち~左側腹部や背中に激しい痛みを生じる急性膵炎と、持続的な膵臓の炎症により膵臓の細胞が徐々に壊されて瘢痕化し機能が低下する慢性膵炎とに分けられます。急性膵炎の原因としては、アルコールの大量摂取・胆石・薬剤性・特発性などが挙げられます。急性膵炎は命にかかわる病気ですので早急な治療が必要になります。また、慢性膵炎の原因はアルコールの常用飲酒が最多であり、その他に喫煙や特発性などがあります。慢性膵炎が進行すると、栄養不良や糖尿病、膵臓がんなどのリスクが高くなります。
日本でのがん死亡者数(2021年)
引用元:人口動態統計がん死亡データ
膵臓がんは、代表的な予後不良ながんであり、あらゆるがんの中で最も生存率が不良なものの1つです。膵がんのリスクとして、喫煙・糖尿病・膵嚢胞・慢性膵炎・膵臓がんの家族歴(血の繋がった家族に膵臓がんの方がいる事)などが挙げられます。糖尿病が膵臓がんリスクを上げる場合と、膵臓がんが糖尿病の原因になっている場合もありますので、糖尿病の診断時には膵臓がんの検査も受けるべきです。近親者に膵臓がんの方がいる場合、特に複数名の場合には、ご自身も膵臓がんになる可能性がさらに高くなりますので、定期的なチェックをお勧めします。膵嚢胞や膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)を超音波検査などで指摘された方も定期的なフォローアップが望まれます。
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